こんにちは、メシ通編集部のムナカタです。
『メシ通』ってパンの話題がイマイチ少ない気がするんですけど、みなさん好きですよね、パン。それこそ、お米と同じで毎日食べている方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、東京・浅草にある「パンのペリカン」というお店です。その名のとおりパン屋さんで、創業は1942年(昭和17年)。つまり75年にもわたって営業している老舗ベーカリーなのです。
一部のパン好きの間では熱狂的なファンを持つ「パンのペリカン」は、いったいどういうお店なんでしょうか。ペリカンのパンを頬張る前に知って欲しい10の事柄を挙げてみました。
①浅草だけど田原町
最寄り駅は、東京メトロ銀座線「田原町」駅。銀座線浅草駅の隣駅ですね。
この田原町駅の2番出口を出て、大きな交差点を渡ると……
あ、見えてきました。浅草駅から歩いても12、13分ほどなので、浅草観光の帰りに立ち寄ることもできます。実際、東京土産にこちらのパンを買い求める観光客も少なくないのだとか。
②ロゴマークがかわいい
「パンのペリカン」って、あのロゴマークがなんともチャーミングなんですよ。さぞかし有名なデザイナーさんが手がけたのかと思いきや、昭和9年生まれの二代目が東京藝術大学に通っていた学生さんにお願いして作ったのだとか。アマチュアでこのクオリティーですよ! ちなみに、その学生さんは卒業後、お菓子のメーカーにデザイナーとして就職されたそうです。
一目見たら忘れられないロゴマークは、パンの袋にもプリントされています。
③たった2種類だけ
- 食パン(角食ともいう。1斤 380円、1.5斤 570円、2斤 760円、3斤 1,140円)
- ロールパン(小ロール10ヶ入 610円、中ロール5ヶ入 460円)
「パンのペリカン」で売っているのは、以上のみ。つまり食パン(角食)とロールパンの2種類だけです。
▲お店に入ってすぐのレジ脇には、上のようなメニューが貼ってある。見てのとおり、サイズや値段に違いは多少あれど、基本はロールパンと食パンの2種類のみ
戦後すぐの頃は総菜パンを売っていたり、ロールパンや食パンの形ももう少しバリエーションがあったようですが、徐々に種類が減っていき、現在の2種類に。それでも、ロールパンは1日4000個、食パンは毎日400本売れていきます。
④行列必至、売切御免
「パンのペリカン」は、浅草では……いや東京都内でも屈指の評判店。朝8時の開店前には行列ができることも珍しくありません。基本的には「売り切れ御免」のため、たいていお昼前には売り切れてしまいます。
おっと、こちらはすべて予約済みのパン。そう、ペリカンのパンは電話で予約することができます。 というか、確実に食べたいなら予約が断然オススメ。
ところが! 午後でもこんな唐突に焼きたてのパンが当日のお客さん用の棚に登場することも。当然すぐなくなります。こればっかりはもう運やタイミングとしか言えません。
⑤シンプルにおいしい
では、ペリカンのパンはどんな味がするのでしょうか。まずはこのロールパン。
ロールパンは通常、ツヤ出し用として表面に卵を塗ることが多いのですが、ペリカンはあえて塗っていません。だから、何もつけずに食べると、小麦粉とバターだけの素朴な味わいが伝わってきます。
ペリカンの信条でもある「毎日食べられる、飽きの来ない味」というのはこのロールパンのためにあるといっても過言じゃないでしょう。
そして食パン。
最近流行のフワッとしたタイプのものとは違い、ペリカンの食パンはみっちり&ずっしりしています。だから持ってみると結構重たい。これは単純に生地が重たいからで、ふんわり膨らませるというよりは、どちらかというと焼き固めるような作り方をしているんだそう。
さらに割ってみると、繊維のようなきめの細かい生地に驚かされます。最初はぜひ何もつけずにご賞味を。モチモチした食感の中、小麦粉の香りとほんのり塩味が口の中に広がり、パンの幸福感を思いっきり味わえますから。
個人的にはたっぷりバターを落としてトーストで食べるのが好きです。もちろん、できうる限りの厚切りで! ハチミツ好きならぜひプラスして!
⑥シンプルじゃなくてもおいしい
ペリカンのパン、とくに食パンはどんなアレンジだって可能。いろんなバリエーションが楽しめるサンドイッチもいいけれど、たとえばこんなふうに、
ベーコンエッグをのっけてもおいしいし(トーストする・しないはお好みで)、
スーパーで買ってきたコロッケやメンチカツをキャベツとともにONするのもアリ。これなんかもう最高っすよ。もっちもちの食感で食べ応え満点だし、かりっとトーストしたらビールのおつまみにだってなるんだから。
⑦店主は若き四代目
2014年から「パンのペリカン」四代目を継いだ渡辺陸さん(写真下)は1987年生まれ。やっと30代になったばかりの若き店主です。
▲渡辺陸さんが手に持っているのは自著『パンのペリカンのはなし』(二見書房)
実はこの渡辺さん、三代目店主の甥っ子にあたり、浅草じゃなくて東京の中野育ち。実際のパン作りは職人さんに任せつつ、お店の経営を行っています。
「四代目になることを決意したのは、せっかく先代が頑張ってここまで続けてきたペリカンを、継ぐ人がいないからというつまらない理由でなくしたくないという思いが強かったから。継がなきゃよかったと後悔したことはありません。ただ、パンの味を守るだけでなく、どうやって未来につなげていくかは自分にかかっているので、それなりのプレッシャーは感じています」(店主・渡辺陸さん)
⑧直営カフェがある
2017年8月、「パンのペリカン」は、お店から歩いて5分足らずの場所で新たに「ペリカンカフェ」(東京都台東区寿3-9-11)をオープンさせました。そう、ここでもペリカンのパンを食べることができるのです。
あのペリカン直営のお店とあって、開店当初からほぼ連日、お客さんが絶えない状況に。満席の場合は店頭のボードに名前と人数を明記するシステムなので、外で呼ばれるのをじっくり待ちましょう(冬はちょっと寒いかもですが)。
▲「ペリカンカフェ」の店構え。店内は木を基調とした、ぬくもりを感じるインテリア
▲ここではカフェ用の素敵なペリカンロゴがお出迎え
▲「ペリカンカフェ」の代表的メニュー、炭焼きトースト(単品 320円、ドリンク付き 540円)。非常にシンプルながら、香ばしくて実に奥深い味わい
▲フルーツサンド(860円)も、ぜひ味わってほしい一品。この他、フードでは各種トーストやサンド類、サラダ、スープ、シチューなど
⑨いろんな飲食店で食べられる
現在、ペリカンのパンは、いろんな飲食店で食べることができます。たとえば、浅草のロシア料理店「ラルース」では、長年ペリカンのパンが使われています。といっても、ただそのまま出しているわけじゃありません。
名物のひとつにもなっている「メルバトースト」(1,100円)は、ペリカンの食パンを風が吹くと消えるくらいの弱火にしたオーブンで3時間ほどかけてカリカリに焼き上げたもの。これに赤ちゃんが離乳食で食べられるくらい安心な素材で作った自家製レバーペーストがついてきます。
これはこれですっごくおいしそうでしょ?
そういえば、以前『メシ通』でリポートした東京・中野の「ばらーど」でも、ペリカンのパンを使ったサンドイッチを出されていましたね。
⑩語りたくなる魅力がある
その歴史やたたずまい、パンの味わいからいって、「パンのペリカン」ほど、“語りたくなるパン屋さん”もそうないのではないでしょうか。
2017年10月に発売された四代目・渡辺陸さんの自著『パンのペリカンのはなし』(二見書房、写真上)には、名だたる文筆家の方々が思い出と愛情たっぷりのコラムを寄せています。
「ペリカンさんは私にとって日本一パンを買いに行くのが楽しみなパン屋さんです。機会があれば歴史やおいしさの秘密についてじっくりお話を聞いてみたい、とずっと機会を狙っていました(笑)。本作りを始めてみると、現在の激しいパン競争の時代を生きる四代目の陸さん、80歳を超える二代目の奥様、45年以上ペリカンの味を支えてきた職人の名木さんのお話は、想像以上にエピソードの宝庫でした。大正時代までさかのぼることができるペリカンのルーツを知ると、ペリカンのおいしさがさらに奥行き深く感じられますよ!」(本の編集を担当した二見書房・千田麻利子さん)
ちなみに、千田さんのいちばんのお気に入りの食べ方は……?
「食パンに苺とあんこをのせて食べる。ペリカンのパンはモチモチしているので苺大福のようです」
さらに、2017年秋には、ドキュメンタリー映画『74歳のペリカンはパンを売る。』が公開に。
映画では、渡辺家だけでなく、その道45年のパン職人さんや、70年代からオーブンや窯のメンテナンスを請け負っている業者の方など、実にいろんな方々の尽力でペリカンが成り立っている様子が描かれています。
以上「パンのペリカン」について知ってほしい10のことを挙げてみました。「食パンとロールパンのしあわせ」なんて、あまり『メシ通』っぽくないタイトルつけちゃいましたが、焼きたての香りをクンクンかぎながらペリカンのパンを心ゆくまで頬張るのは、至福そのもの。こんなに「しあわせ」を感じるパンもないんじゃないかと思うんですよね、ホント。
みなさんもぜひお試し下さい。あ、もしも売り切れてたらごめんね。
お店情報
パンのペリカン
住所:東京都台東区寿4-7-4
電話番号:03-3841-4686
営業時間:8:00〜17:00
定休日:日曜日、祭日、特別休業日(夏季、年始)
ウェブサイト:http://www.bakerpelican.com/