今すぐベイクポートアプリをダウンロード

5分でわかるフラン ~歴史・起源・雑学~

5分でわかるフラン ~歴史・起源・雑学~

フランの歴史と魅力を探る

表面はこんがり焼けて、ナイフを入れるとぷるんと揺れる優しい食感。
シンプルなのに記憶に残り、どこか懐かしさを呼び起こす――それがフランです。

パティスリーの定番ですが、実はフランスのパン屋(ブーランジュリー)がずっと守ってきた“生活のお菓子”。
近年は日本でも専門店をつくる職人が現れ、再評価が進んでいます。

本記事ではそんな「フラン」の起源や歴史、魅力とともにシェフたちにも新たな発見があるような雑学を紹介します。

フランの起源と歴史

フラン(Flan)は、フランス菓子…という印象が強いですが、実は起源はもっと古く、古代ローマ時代までさかのぼります。
当時のフランは、牛乳・卵・はちみつを混ぜて固めた素朴なプリンのようなもので、宴会の最後に出る“締めの甘味”として愛されていました。

中世になるとフランスへ広まり、パン屋が焼く“庶民のお菓子”として定着します。
特に15世紀以降、パイ生地(パート・ブリゼ)にカスタードを流し込んで焼くスタイルが生まれ、いまの「フラン・パティシエール」のルーツが確立。

この“生地+カスタード+焼く”という組み合わせは、バター文化のあるフランスだからこそ育った菓子のかたちと言えます。

興味深いのは、フランはパティスリーよりもブーランジュリー(パン屋)に強く根付いた菓子だということ。
一度に大きく焼けてカットして売れるため、回転が早く、仕込みの合間にも作りやすい。

“パン屋の日常に最も寄り添うフランス菓子”と呼ばれる理由はここにあります。

フランの製法と特徴

基本のフランは、卵・牛乳・砂糖・バニラというシンプルな原料で構成されています。
ただし、シンプルゆえに“素材と火加減がすべて”という、職人の力量が思い切り表れるタイプの菓子です。

一般的には、下生地に
・パート・ブリゼ(甘さ控えめで香ばしい)
・パート・シュクレ(甘くリッチ)

いずれかを敷き、そこに「フラン液」と呼ばれるカスタードベースのクリームを流し込みます。
このフラン液は、カスタードよりも小麦粉やコーンスターチでしっかりと固めるのが特徴。
焼成中にほどよく膨らみ、表面に焼き色がつくことで、フラン特有のコクと香ばしさが生まれます。

パン屋視点でのポイントは、パンの発酵待ちや仕込みの隙間時間に仕込みやすいこと。
大量に焼けて歩留まりが良い、冷蔵ショーケースでも日持ちしやすい、さらに焼き立てよりも“翌日がおいしい”という特性は、パンとは真逆で面白い存在です。

最近では、
・ルヴァン種を加えた小麦の香りが強いフラン
・生クリーム比率を上げた超リッチタイプ
・抹茶・黒糖・ほうじ茶など和素材アレンジ
・厚さ4cm以上の“分厚いフラン”
など、アレンジの幅が大きく広がっています。

粉選び、焼成温度、厚み――わずかな違いで食感が大きく変化するため、パン職人の技術表現にもぴったりのお菓子です。

フラン好きのフランス人、切り方にも“こだわり”がある?

フランスでは、フランは「日常系のごほうび」。
高級ケーキというより、**“今日ちょっと疲れたからフランでも買って帰るか”**という気分で気軽に買われています。

面白いのは、カットの仕方に好みがある人が多いこと。
三角カット派、長方形派、端っこ(表面の焦げが強い部分)派など、まるで日本の角食の“耳好き”のように細かいこだわりが存在します。

さらにフランスでは、“職場にフランを持って行くと、全員が喜ぶ”と言われるほど国民的お菓子。

パン屋の前を通りがかった人が、「今日は端っこある?」と聞いていくことも珍しくありません。

この“カジュアルなお菓子文化”は、日本のパン屋にも大きなヒントがあります。
気取らず、毎日でも買える価格帯。
大きく焼いてカット売りできる生産性の高さ。
そして、お客さんの“好み”が細かいほど、コミュニケーションが生まれやすい。

フランとは「お店とお客の会話を生むお菓子」でもあるわけです。

サクッとまとめ!

フランは、古代から続く長い歴史を持ちながら、現代のパン屋の仕事にも驚くほどフィットする“不思議なフランス菓子”です。

・発酵を必要としないため仕込むタイミングを選ばない
・大量生産しやすく、利益確保に向いている
・素材や厚みの違いで個性が出しやすい
・カット売りと相性が良く、客との会話も生まれる

これらはパン屋にとって、実は大きな武器になります。
サンドイッチや焼き込みアップルパイに続く“定番の第三商品”として、フランが再評価されている理由もここにあります。

次にフランを焼くとき、単なる「カスタードのタルト」ではなく、“パン屋の技術と文化を映す存在”として捉えてみてください。
その一皿に、まだまだ新しい提案の余白が隠れています。

この記事を通じて、パン業界の皆様にフランの魅力を再発見し、新たなインスピレーションを得ていただければ幸いです。

5分でわかるフラン ~歴史・起源・雑学~

この記事が気に入ったら
フォローしてね!