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5分でわかるバゲット ~歴史・起源・雑学~

5分でわかるバゲット ~歴史・起源・雑学~

バゲットの歴史と魅力を探る

パンの代名詞ともいえる「バゲット」。
長く、美しく、そして香ばしい――その姿はまさに“フランスの誇り”です。

しかし、この定番パンが誕生したのは意外にも近代になってから。
もともとは「効率」と「時代の制約」から生まれた“合理的なパン”でした。

本記事ではそんな「バゲット」の起源や歴史、魅力とともにシェフたちにも新たな発見があるような雑学を紹介します。

バゲットの起源と歴史

バゲット(Baguette)はフランス語で「棒」や「杖」を意味します。
今では“フランスパン”の代名詞ですが、実は誕生は20世紀初頭。
それ以前のフランスでは、丸い形をした「ブール」や、重くどっしりとしたカンパーニュが主流でした。

19世紀末、都市化が進むパリでは「より早く焼けるパン」が求められるようになります。
政府が制定した「夜間労働禁止法」により、パン職人は夜中に仕込みができなくなったため、短時間で発酵・焼成できる細長いパン――つまりバゲットが生まれました。

その後、第一次世界大戦後にガスオーブンが普及し、焼成技術が進化。
皮は薄くパリッと、中は軽やかで香ばしい“現代のバゲット”のスタイルが確立していきました。

つまり、バゲットは伝統というより時代の変化に応じて生まれた革新的なパン。
「効率的で美味しいパンを求める」という職人の柔軟さが生み出した、フランスらしい合理の結晶なのです。

バゲットの製法と特徴

バゲットの基本材料は小麦粉、水、塩、酵母のみ。
添加物や油脂を使わない、極限までシンプルな配合です。
その分、生地づくりと焼成の工程に、職人の感覚と経験がすべて表れます。

生地の水分量は加水率65~75%前後。
発酵の温度・時間・湿度のバランスを見極めながら、生地を育てるように扱います。
整形では、張りを出しながらもガスを抜きすぎない――その微妙な手加減が、焼き上がりのクラム(内層)とクラスト(外皮)を決定づけます。

そして、バゲットの象徴であるクープ(切り込み)。
深さ・角度・間隔のほんのわずかな違いが、焼成時の開きや香りに大きく影響します。
焼き上がりの“パチパチ”という音は、クラストが冷めながら縮むときの小麦の息吹。
この音を「バゲットの拍手」と呼ぶ職人もいます。

パン屋にとっての気づきは、バゲットが“最もシンプルで、最も難しいパン”であるということ。
原料の質・発酵の見極め・オーブンの癖――どれか一つが狂えば仕上がりが崩れる。
だからこそ、バゲットは職人の技量を映す鏡であり、店の“基準”となる存在なのです。

フランス人は“バゲットを脇に抱える”?

バゲットといえば、脇に抱えて歩くフランス人――そんなイメージを思い浮かべる人も多いでしょう。
実はあれ、映画や絵だけの演出ではなく、パリの街では今もリアルに見られる光景です。

フランスでは、バゲットは“日用品”のひとつ。
スーパーやパン屋(ブーランジュリー)で1日に1〜2本買うのが当たり前で、多くの人が夕方の帰り道、買ったばかりのバゲットを紙袋にも入れずそのまま抱えて歩きます。
それほどまでに、バゲットは生活に溶け込んだ存在なのです。

興味深いのは、買ってすぐ先端をちぎって食べる人が多いこと。
この習慣は「キュイエット(Cueillette)」と呼ばれ、「焼きたての香りを我慢できない!」というフランス人の食文化を象徴しています。
まさに“バゲット=生活の一部”という考え方です。

この文化的背景を知ると、パン屋の視点でもヒントがあります。
バゲットは“特別なパン”ではなく“毎日のパン”。
フランスでは焼きたてを一日何度も出す店が多く、それが「焼きたて文化」としてお客様の信頼を生んでいます。

日本のパン屋でも、焼成タイミングを小分けにするだけで、「いつ来ても香ばしい匂いがする店」という印象をつくれるかもしれません。

サクッとまとめ!

バゲットは、一見伝統的に見えて、実は時代の要請から生まれた革新のパンです。
発酵と焼成を突き詰めたその製法は、シンプルゆえに奥が深く、粉・水・温度・時間――どれもが職人の感覚に委ねられます。

現代のベーカリーにおける新たな気づきは、バゲットが“原点”であると同時に、“更新され続けるパン”だということ。
ハード系人気の再燃やサワードウ文化の広がりの中で、バゲットは今なお「粉の個性」を語るための最良のキャンバスです。

例えば、国産小麦で軽やかに焼く、ルヴァンを使って深みを出す、細めに成形して惣菜と合わせる――。
どんなアプローチでも、“あなたの店の味”として昇華できる余白があります。

バゲットとは、職人が“日常の中で挑戦を続けるパン”。
いつものラインナップに並ぶ一本にも、今日の焼き加減・明日の粉選び・自分らしい配合――そのすべての答えが刻まれています。

この記事を通じて、パン業界の皆様にバゲットの魅力を再発見し、新たなインスピレーションを得ていただければ幸いです。

5分でわかるバゲット ~歴史・起源・雑学~

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