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パン職人の働き方、「時間」だけじゃない。“続けられる現場”とは何かを考える

パン職人の仕事には、正解の時間割がありません。
生地が語りかけてくる声を聞きながら、その日の天気やお客様の動き、スタッフの状況に合わせて、流れを組み立てる。
だから気がつくと、「1日13時間働いていた」ということも少なくありません。

今回、現場で働く職人・オーナーの方々にアンケートを行ったところ、見えてきたのは「長時間労働」と「理想の働き方」の間で揺れる現実。そしてその間に、「それでもこの仕事を続けたい」という確かな思いがありました。

「時間を短くする」のはすぐには難しい。だからこそ、“どうすればこの仕事を気持ちよく続けられるのか”という視点で、いまの働き方を見つめ直してみませんか?

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1日13時間、それでも“長いとは言えない”現場の実情

アンケートでは「1日11〜13時間働いている」と答えた方が大半を占めていました。
中には「それ以上」と答える方も。

しかし、それが単に“長時間労働=悪”という話では済まないのがパン業界の現場です。
なぜなら、仕込みから焼成、陳列、販売、清掃、翌日の準備まで、すべてが「一連の技術」でつながっているからです。

「全部、自分でやらないと納得がいかない」「品質を落としたくない」──
そんな思いが、自然と作業時間を押し広げてしまう。
そして、それを「当たり前」として受け入れてきた職人たちの矜持がそこにあります。

本当は“8時間が理想”──その声が教えてくれたこと

一方で、「理想の労働時間は?」という問いには、最も多く「8時間」という声が集まりました。
理由の多くは「プライベートも充実させたい」「家族との時間がほしい」「集中力の限界を感じる」といったものでした。

これは、「ラクをしたい」わけではありません。
むしろ、「長く、良い仕事を続けたいからこそ、無理をしたくない」という切実な声です。
ベテランであっても、若手であっても、自分の力を最大限に発揮できるリズムを探しているのだと感じました。

朝2時からの仕込み。慣れてはいるけど、決して“楽”ではない

「始業は何時ですか?」という問いに、「2時」「3時」「4時」といった回答が並びます。
多くの人が「丁度いい」と答えていますが、それは“慣れた”ということであって、“体に優しい”わけではありません。

しかも、多くの店舗では、1〜2名で仕込みを行っているのが現状。
たった数人で朝の仕込みから店の準備までをこなすのが日常となっています。

その姿は、誇り高く、そして美しい。
けれど、「このやり方を10年後も続けられるか?」と考えたとき、少し立ち止まる必要があるかもしれません。

今すぐ時間は変えられない。だからこそ、職場の“空気”をつくる

長時間労働を前提とした現場に、法律や理想だけを持ち込んでも、現実は動きません。
でも、時間をすぐに変えられないからこそ、「働く空気」や「関係性」には意識を向けることができるのではないでしょうか。

経営者であれば、
「無理が続かないように」「今いる人が続けられるように」──
そのための職場づくりが求められています。たとえば、ちょっとした休憩スペースをつくる。人間関係に配慮したシフトを組む。言葉かけを大切にする。

従業員側もまた、
「仕事の中に、自分なりの楽しみを見つける」ことが、息の長い働き方につながっていきます。
技術の向上も、モチベーションも、“その現場にいることが心地いい”という感覚から生まれるはずです。

働きやすさは、「時間の短さ」ではなく「時間の質」から

今回のアンケートから見えてきたのは、パン職人の現場には“矛盾”が共存しているということでした。
長時間働いている。でも、働くことが嫌なわけではない。
理想はある。でも、現実には現実の事情がある。

だからこそ、いま必要なのは、「どちらかを否定すること」ではなく、
“どうすればこの仕事を続けたくなるか”を、みんなで考えていくことなのではないでしょうか。

技術と情熱に支えられたパン屋の現場が、もっと“心地よい場所”になることを願って。
このアンケートの声が、その一歩になれば幸いです。

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