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5分でわかるクッペ ~歴史・起源・雑学~

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クッペの歴史と魅力を探る

クッペ

フランスパンの中でも、もっとも身近で、もっとも奥が深いのが「クッペ」。
ハード系の入門として知られますが、実はその存在は「バゲット」と肩を並べるほど長い歴史を持っています。

丸みを帯びた短い形、1本だけ入ったクープ。
見慣れた姿の中には、職人の技術と哲学が詰まっています。

本記事ではそんな「クッペ」の起源や歴史、魅力とともにシェフたちにも新たな発見があるような雑学を紹介します。

クッペの起源と歴史

クッペ

クッペ(Coupe)という言葉は、フランス語で「切られたもの」という意味。
その名の通り、成形した生地に1本だけクープ(切り込み)を入れて焼くことから名づけられました。

19世紀末、長く細い「バゲット」がパリで流行する以前、フランスではこの短く太めの形が主流でした。
つまり、クッペは“フランスパンの原型”とも言える存在なのです。

当時のフランスでは、家庭ごとにパン生地をこね、村の共同窯でまとめて焼いていました。
そのため、家庭ごとに入れるクープの形が“焼き上がりを見分ける印”になっていたと言われます。
シンプルな形状の中に、家庭の個性が宿っていたのです。

バゲットが都市的なパンとして発展していったのに対し、クッペは地方や家庭で長く愛され続けました。
現代のパン屋が地域に根ざしてパンを焼く姿勢には、この“日常のパン文化”がどこか重なります。

クッペは、フランスのパン文化における「原点」であり、「暮らしの象徴」なのです。

クッペの製法と特徴

クッペ

クッペの生地は、小麦粉・水・塩・酵母のみ。いわゆるリーン生地で構成されます。
配合こそバゲットと似ていますが、成形と焼成によってまったく違う個性を生み出します。

短く、やや太めに成形することで水分保持率が高くなり、外はパリッと香ばしく、中はもっちりとした食感に。
この“外カリ中モチ”の対比こそ、クッペの最大の魅力です。

クープの入れ方ひとつで印象が変わるのも特徴です。
1本のクープを深すぎず浅すぎず、ほんの数ミリの角度で入れることで、焼成中に理想的な「開き」が生まれます。
その瞬間、クラストが香ばしく裂け、粉の香りが立ちのぼる。
まさに職人の呼吸が表れるパンです。

また、クッペは粉の特性を試すのに最適なパンでもあります。
強力粉・準強力粉のブレンド比率を変えると香りもクラムの気泡も変わり、発酵時間やスチームの入れ方次第で、まったく別の表情を見せます。

新しい銘柄粉や自家製酵母を試す際に、まずクッペでテストする職人が多いのはそのためです。
つまりクッペは、販売用パンであると同時に、**技術確認・粉の研究に最適な“現場の教材”**でもあるのです。

クープに宿る哲学 ― “切ることで生かすパン”

クッペ

「クッペ=切られたもの」という名前を聞くと、少し物騒に感じるかもしれません。
けれど実はこの“切る”という動作こそ、パン作りの象徴です。

クープ(切り込み)は、単なる装飾ではなく、焼成中に生地の膨張をコントロールするための重要な工程。
切ることで生地を“生かす”――この逆説的な発想が、職人の哲学を感じさせます。

フランスでは「クープを見れば職人の腕がわかる」と言われています。
パリの老舗ブーランジュリーでも、新人職人が最初に任されるのはクッペのクープ入れ。
シンプルな作業の中に、手の角度・スピード・温度・湿度など、パン作りのすべての要素が集約されています。

つまりクッペは、パン職人にとって“技術の入り口”でありながら、
同時に“完成形”でもあるパン。
切るという行為に、職人の呼吸と美学が凝縮された一品なのです。

サクッとまとめ!

クッペは、フランスの庶民的な食卓で育まれた、いわば“パン文化の原点”。
短く太いその姿には、家庭で焼かれていた頃の温もりと、職人が磨き続けてきた技術の両方が息づいています。

素材はシンプルでも、クープ1本の角度で仕上がりが変わる奥深さ。
だからこそクッペは、パン職人にとって“技術の鏡”であり“表現のキャンバス”なのです。

パン屋にとっての新たな気づきは、クッペが単なる「小さなバゲット」ではなく、粉・火・水・技の関係性を確認できる基礎パンであるということ。
また、粉の違いを伝える試食パンや、クープを比較する技術展示としても活用できるでしょう。

次にクッペを焼くとき、ただ「売るためのパン」ではなく、自分の店らしさを映す“職人のサイン”としてクープを入れてみてください。
きっとその1本の線が、パン屋としての哲学を語ってくれるはずです。

この記事を通じて、パン業界の皆様にクッペの魅力を再発見し、新たなインスピレーションを得ていただければ幸いです。

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