5分でわかるケランパン ~歴史・起源・雑学~

ケランパンの歴史と魅力を探る
韓国の冬の屋台の定番として知られ、近年は日本のパン屋でも徐々に見かけるようになってきた“ケランパン”。
コロンとした楕円形の生地に、丸ごと卵をドンとのせて焼く素朴な路上パンですが、その背景には実は「屋台文化」「家庭文化」「若者カルチャー」が複雑に重なっています。
本記事ではそんな「ケランパン」の起源や歴史、魅力とともにシェフたちにも新たな発見があるような雑学を紹介します。
ケランパンの起源と歴史
ケランパンは韓国語で「卵パン」という意味。
誕生したのは1960〜70年代ごろと言われ、都市部の屋台が急増した時期と重なります。
当時、冬は気温が急激に下がるため、温かくて腹持ちが良く、しかも安価な軽食が求められていました。
そこで登場したのが、甘めのパン生地に卵をのせて一緒に焼くというシンプルな屋台パン。
生地はスポンジケーキに近いものから、軽いパン生地に近いものまで店によって幅広く、「ケランパン=家庭で作れるおやつ」というイメージも広まりました。
つまりケランパンは、**パン屋が生んだ商品というより、屋台と家庭が育てた“市民的なパン”**なのです。
1990年代以降、韓国の冬の風物詩として完全に定着し、駅前・大学周辺・繁華街など、寒い街角の“お腹も心も満たす屋台フード”として人気に。
この“市民のパン”である点が、パン屋で扱う際にも実は大きなヒントになります。
ケランパンの製法と特徴
ケランパンの基本的な構成は非常にシンプルです。
・甘めの生地(パン生地 or ホットケーキに近い液状生地)
・丸ごとの卵
・ほんのりバターやバニラの香り
屋台でよく見られるのは、液状のケーキ生地を舟形の専用型に流し込み、そこに卵を丸ごと落として焼くスタイル。
熱い鉄板の上で下火が入り、上からの蒸気でふっくら焼き上がる“半蒸し焼き”状態が、独特の食感を生み出します。
最近のパン屋で人気なのは、パン生地と卵を組み合わせたタイプ。
ブリオッシュや食パン生地を小さく成形し、中央に卵をのせて焼くことで、屋台よりも香ばしさやパンとしての満足度がアップします。
また、トッピングアレンジの広がりもケランパンの面白さです。
・ベーコンやハム
・チーズ
・コーンバター
・ハーブ
・胡椒やガーリックバター
・韓国風の甘辛ソース
“卵”という最強食材が主役になるため、どの店でも個性を出しやすいカテゴリー。
忙しい朝のショッパー向け、子どもの軽食向けなど、ターゲットを絞った商品づくりがしやすいパンでもあります。
韓国では“形でテンションが変わる”パン?
ケランパンには、実はちょっと笑える韓国カルチャーがあります。
韓国では「ケランパンは形が可愛いとおいしく感じる」という声が昔から多いのです。
楕円のフォルムに、卵がちょこんと顔を出した姿がどこか“キャラクター化”されていて、SNSが普及する前から「写真に撮りたくなる屋台パン」として一定の人気がありました。
最近では、ハート型・星型・キャラ型など、型のバリエーションで勝負する屋台も登場し、若者の支持を集めています。
また、韓国では「卵が中央に沈んでいるか」「半熟か」「しっかり固まっているか」でファンが分かれるほど、細かい好みが存在します。
屋台によって卵が先か、生地が先か、焼き加減はどれくらいか――実はけっこう奥が深い世界です。
つまりケランパンは、「見た目の可愛さ × 熱々の満足感 × 手軽さ」が揃った“コンテンツ力の高いパン”。
パン屋でも“見た目のバリエーション”を出しやすく、SNS時代に強い商品ジャンルと言えます。
サクッとまとめ!
ケランパンは、韓国の屋台文化と家庭文化が合わさって生まれた“生活密着型のパン”。
素朴ながら、卵という最強食材が主役を張ることで、誰が食べても満足度が高く、近年の日本でも“朝の軽食枠”“可愛い系パン枠”として広がりつつあります。
パン屋視点での気づきは、ケランパンが「高回転・高利益・高満足」の三拍子が揃った商品であるということ。
・卵×パンという強い組み合わせ
・焼成や素材の工夫で個性が出せる
・屋台由来なので“親しみ・かわいさ・ライブ感”が強い
・SNSで拡散されやすいビジュアル力
これらは、売り場の新しい柱になり得る要素ばかりです。
「冬の屋台パン」という先入観を超えて、“パン屋ならではのリッチ版ケランパン”を提案すれば、ベーカリーの商品ラインに新しい風を吹かせることができます。
次にあなたの店でケランパンを作るとき、定番ではなく、**“気軽に食べられるミニサイズの幸せパン”**として提案してみてください。
小さな楕円の中に、まだまだ大きな可能性が詰まっています。
この記事を通じて、パン業界の皆様にケランパンの魅力を再発見し、新たなインスピレーションを得ていただければ幸いです。
