お客様の心を動かす商品ネーミング

商品に“物語”を持たせるネーミングと演出
──お客様の心を動かす「ストーリー設計」の技術
パンは、素材・技術・仕込み時間など“積み重ねのストーリー”から生まれます。
しかし、その物語が棚の上で伝わらなければ、魅力は半分しか届きません。
そこで鍵となるのが「ネーミング」と「演出」。
これは単なる言葉遊びではなく、行動心理・購買研究の分野でも効果が立証されている“売れる技術”です。
この記事では、パン職人ならではのストーリーをどう商品に落とし込むか、どのように売場へ反映させるかを具体的に解説します。
■ 1. 名前は“味の前の第一印象”
人は、味わう前に名前で味を想像します。
これは食品マーケティング研究でも繰り返し示されており、“名前の付け方だけで期待値と購買意欲が変わる”ことが確認されています。
✔ ネーミングで効果が生まれる理由
🥐感覚を刺激(例:ふわっと、じゅわっ、カリもち)
🥐イメージを具体化(例:◯◯農園のリンゴ、湯種仕込み)
🥐独自性を付与(例:店の価値観・哲学を反映)
パンは見た目だけでは伝わりにくい特徴が多い食品です。
生地の食感、発酵の香り、余韻の甘み――こうした要素を言語化して補うのがネーミングの役割です。
■ 2. “物語”はお客様の購買理由になる
ストーリーのある商品は、お客様の記憶に残ります。
心理学的には「エピソード記憶の優位性」と呼ばれ、物語は単なる情報より強く、人の“選択”に影響を与えるとされています。
✔ パン屋で活かせるストーリー例
🥐素材の背景(小麦の産地、農家とのつながり)
🥐技術工程(前日に仕込む発酵種、特別な折り込みバター)
🥐温度・湿度・手間(仕込み時間、湯種・中種の工夫)
🥐食べ方の提案(焼き戻しのタイミング、相性の良い飲み物)
特にパンの場合、同じ名前が並びやすい商品――「食パン」「クリームパン」「あんぱん」などは、“物語付け“によって差別化しやすいジャンルです。
■ 3. 売場の“見せ方”で物語は完成する
良い名前と良いストーリーがあっても、売場で伝わらなければ意味がありません。
近年のリテール研究でも、「視認性」「情報提示」「ポジショニング」によって売上が大きく変わることが示されています。
✔ 売場でできる“演出”の具体例
🥐棚の最前列に、ネーミングPOPを配置する
→ 商品の“第一声”をPOPに担わせる
🥐ベストな食べ方を添える
→ 「トースト2分で外カリ・中もちに」
🥐こだわり素材の一言を加える
→ 「◯◯産バターの香りが立ちます」
🥐“手に取りやすい高さ”に置く
→ 多くの店舗で120~140cm帯が最も反応が良いとされる
物語=文章だけではなく、
ネーミング × POP × 配置 × 視線誘導
のすべてがそろって初めて“価値が伝わる売場”になります。
■ 4. ストーリーが売上に効くのは、科学的根拠がある
パン業界では感覚的に語られることの多かった「ネーミング」「ストーリー」「売場演出」ですが、近年は研究としても裏付けが進んでいます。
✔ 研究で示されている代表的な効果
🥐食品にストーリーを添えると購買意欲・美味しさ評価が向上する
🥐名前を変えるだけで売上が20%以上伸びるケースがある
🥐食品の“由来”情報は味覚の評価を底上げする
🥐視認性・目線誘導の設計は売上を有意に上げる
つまり、パン屋の「名前」「ストーリー」「演出」は、
職人の想い+行動心理学に基づいた“売れる技術”なのです。
■ 5. “物語”を設計するための現場チェックリスト📝
🥐このパンは「どんな人に」食べてもらいたい?
🥐その人が“最初に知るべきこと”は何?
🥐食感・香り・余韻を言葉で表すなら?
🥐素材の来歴は語れる?
🥐食べ方の提案をPOPに載せたか?
🥐名前は商品の独自性と魅力を伝えているか?
🥐そのパンの「誕生秘話」は語れるか?
パン職人の頭の中にある情報を棚の上に翻訳してあげるだけで、売場の空気は変わります。
■ おわりに
パンは、作り手の物語が濃く宿る食品です。
だからこそ、その“背景”を棚の上でしっかり伝える。
名前とPOPと配置がそろえば、
「ただのパン」ではなく「選ばれるパン」になります。
ストーリーづくりは技術です。
明日から職場で、あなたのパンに“ひと言の物語”を添えてみてください。
その瞬間から、新しいファンが生まれはじめます。
