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パンとスイーツの交差点 パン屋と洋菓子屋の客層はどこで交わる?

パンとスイーツの交差点 パン屋と洋菓子屋の客層はどこで交わる?

パンとスイーツの交差点 パン屋と洋菓子屋の客層はどこで交わる?

パン屋さんに行く顧客層と洋菓子屋さんに行く顧客層は交わっているのではないかという仮説を考えました。
今回は洋菓子屋さんに年1回以上行く洋菓子好きな消費者に洋菓子のことのみならず、パン屋に行くかどうか、どれくらい購買するのかも調査しました。
パン屋さんが洋菓子屋さんを参考にできるところはどこかを考えてみましょう。
実際に洋菓子屋さんの要素を取り入れたり、意識したりしているシェフにお話を伺いました。

洋菓子屋の顧客層をパン屋は狙える!パンの購入単価も高額な傾向

洋菓子好きの消費者のほぼ7割は、パン屋さんにもよく足を運んでいます。その特徴を把握しておきましょう。

洋菓子好きの約66%がパン屋によく行くパン好き

●Q1 パン屋さんに行く頻度はどれくらいですか?(n=332)

洋菓子屋さんに行く洋菓子好き消費者にパン屋さんに行く頻度を尋ねると66%が月1回以上パン屋さんに行くと答えました。
月1回以上パン屋さんに行く人を「パン好き消費者」と定義するならば、洋菓子好き消費者の大半がパン好き消費者であることがわかります。
さらに、洋菓子好きの約4人に1人が週1回以上の高頻度でパン屋さんに行く常連さんということもわかりました。
つまり、洋菓子屋さんにいる顧客層をパン屋さんは十分狙えると言えるでしょう。
さて、洋菓子屋さんにはどんな時に行くイメージがあるでしょうか?
誕生日などの記念日や、クリスマスなどのイベント時にケーキなどを購入するイメージ、ちょっとしたご褒美としてなど非日常を求めているシーンが多いでしょう。
よって、洋菓子屋さんは「ハレ」の日に強いと言え、その分、高単価な商品が売れやすいです。
パン屋さんは日常の生活導線に沿った高頻度な利用が強みと言えますが、洋菓子屋さんの強みの「ハレ」の要素をパン屋さんに取り入れることができれば客単価アップを狙えるかもしれません。

洋菓子&パン好きは パン屋さんへの支払額が高め

~パン屋さんに行くと答えた人に追加で質問!~

●Q2 パン屋さんに行く際の1回あたりの平均支払額を教えてください。(n=219)

以前のパン好き消費者アンケートでパン屋さんに行く際の予算感を尋ねたことがあります。
大体のボリュームゾーンは1000円前後なので、「1501円以上」と答えているのは高額な予算と考えられるでしょう。
その「1501円以上の予算」と「予算を決めていない」と答えていたのは28.1%でした。

今回、洋菓子好き消費者にパン屋の1回あたりの平均支払額を尋ねると、1501円以上と答えたのは35.5%でした。
つまり洋菓子好き消費者のパン屋さんでの購入額は高めになることが判明しました。
洋菓子屋さんでの高めの単価に慣れていると、パン屋さんの日常の購入金額が高めになるのかもしれません。
そこで、パン屋さんは洋菓子屋さんの「演出力」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

たとえばパン屋さんの焼き菓子はプチギフトや贈答品を想定した商品にすることができます。
箱詰め、リボン、ブランドシールなど、包装など演出が得意な洋菓子屋さんを参考にしてみてもよいでしょう。
また既存のパンからも演出力を意識することができます。
ケーキのように仕立てたフルーツデニッシュ、パティスリーのクリームを使ったサンドなどパンでありながらスイーツでもあるという立ち位置の商品を出してみてもよいですね。

洋菓子屋の顧客層をパン屋が狙うなら ご褒美スイーツや手土産商品が狙い目

菓子屋さんを参考にするにしても実際に洋菓子屋さんの顧客層の購買傾向がわからないと始まらないので調べてみました。

●Q3 洋菓子に行く際の1回あたりの平均支払金額を教えてください(n=332)

●Q4 洋菓子屋の利用目的を教えてください(n=332)

●Q5 洋菓子屋での主な購入商品を教えてください(n=332)

◇パン屋さんが狙える領域は 日常のおやつ・ご褒美としての、焼き菓子やスイーツ系パン

手軽に食べられる洋菓子が人気!

洋菓子好き消費者に洋菓子屋さんでの平均支払金額を尋ねたところ、2000円以内と答えた方が59.3%でした。
意外と手ごろな価格帯で洋菓子を楽しんでいることが伺えます。
洋菓子屋の利用目的を尋ねたところ、「誕生日・記念日の利用」63.6%と「日常のおやつ・ご褒美として利用」63.0%と拮抗していました。
ということで一度の平均支払金額ごとに利用目的を調べたところ、2000円以下の手ごろな価格の消費者の利用目的1位が「日常のおやつ・ご褒美として利用」で、2001円~の高単価層の利用目的1位が「誕生日・記念日の利用」でした。
主な購入商品を尋ねたところ1位がカットケーキ、2位がシュークリーム・エクレア、3位が焼き菓子と続いています。
各商品カテゴリーに利用目的を聞いたところ、ホールケーキとカットケーキ購入層の1位が「誕生日・記念日の利用」でした。
その他の商品の購入層の1位が「日常のおやつ・ご褒美としての利用」でした。
パン屋さんが洋菓子屋さんのエッセンスを取り入れるなら、日常のおやつやご褒美需要としてスイーツ系のパンや、手土産にもなる焼き菓子など手ごろなところから狙うのが良いでしょう。

お菓子とパンの共存の可能性 ブランド作りに

「お菓子とパンの両立」をテーマに、日常使いできるお店を目指すパティスリー・ブーランジェリー・アルタナティブの古屋シェフにお話をうかがいました。

パティスリー ブーランジェリー アルタナティブ オーナーシェフ 古屋 健太郎さん

日常に上質さを。 菓子とパンが相互の客層を呼び込む

特別な日のケーキを買いに来たお客様が、ここはパンも売っているんだと気づいて食事パンを買っていく、その逆もしかり。
両方があることで、お互いの魅力を引き出せます。

客層としては男女差なく幅広いお客様層に通っていただいています。
意外に思われるかもしれませんが男性客も多いんですよ。
男性の傾向として、気に入ったものを繰り返し選ぶ傾向があり、一度気に入っていただければ常連になっていただいているように思います。
一方女性は新しい物への感度が高い方が多く、新しい商品にも興味を持っていただけるように思います。

お店のブランドや個性に欠かせない存在がパン

商品ラインナップとしてパンの商品はこのくらいまでというようなイメージがあり、売上構成だとパンは全体の10%前後です。
それでも、パンは当店のブランドや個性づくりに欠かせない存在です。
フランスの本場のお菓子やパンが楽しめる店ということが伝わっているのか、バゲットやカンパーニュなど大きな食事パンがよく出ます。
そこは驚いた点です。
食事パンは日常消費に向いているので、よりお客様が頻繁に来店しやすくなると思います。

パン屋さんが洋菓子を取り入れるならタルトがおすすめ

パン屋さんがパティスリーの要素を取り入れるなら、タルトのような構成力のあるお菓子をつくるのが有効だと思います。
デニッシュをつくっているパン屋さんがあると思いますが、あえて、本格的なタルトを作りこんで売り出すと差別化につながると思います。
タルトはパン屋さんで普段使っている材料で作れるので作ってみてはいかかでしょうか。
当店は夏にタルトイベントを開催していて、生菓子を並べないかわりにショーケースをタルトで埋め尽くすんです。
限定性があり、新たな取り組みを面白がってくれるお客様がおり、大きな反響がありました。

パンもお菓子も作れるが 魅力で人材が集まる

当店はお菓子もパンも作っているので、お菓子もパンもどっちもやってみたいという志向の職人が集まります。
双方の技術どちらも学べる環境であることが採用面でも魅力になっているように感じます。
パン職人が菓子に触れる、菓子職人がパンを学ぶことで技術的な刺激と相互理解が生まれていると思います。

パティスリーとの交流で感じたパン屋さんの強みと伸びしろ

先日パティスリーとパン屋さんの共同の講習会に参加して実感したことをエスプランの塩田シェフにお話をうかがいました。

エスプラン オーナーシェフ 塩田 悠樹さん

「小さなご褒美」としてのパン需要

当店の看板商品は「珈琲あんぱん」と「生ずんだあんぱん」です。
近年はお土産需要がのびており、8個入り・10個入りの箱入り注文も増えていてギフトとして確立しているように思います。
パンが「週の真ん中の小さなご褒美」として選ばれているように感じます。
ケーキのような“ハレの日”のご褒美でなく日常のちょっとした癒しとして、デニッシュやモンブラン系がよく売れているように感じます。

パン職人と菓子職人の交流で見えた 考え方の違い

先日、ベーカリーのシェフとパティスリーのシェフの合同の講習会に参加しました。
そこで両者の考え方の違いを実感しました。
パン職人はベーカリーパーセンテージで小麦を100として考えて配合をしますが、パティシエは乳製品・粉・砂糖などの全体のバランスで考えています。
この発想の差があると思いました。
配合の考え方が違えば、仕上がりの世界も変わります。
互いの視点を知ることが商品開発のヒントになるように思います。

「再現性」「構成力」「演出力」に 強みを持つパティスリー

パティスリーのすごさは「再現性」、「構成力」、「演出力」にあると思います。
パティスリーは、基本的にレシピ通りにつくることを前提とした再現性があると思います。

また、層を重ねて味や食感を設計する構成力、鮮やかで視覚的な演出力があり、ケーキはどう見せるかまで含めて完成されているのがすばらしいと思います。
特に構成力はパン屋さんが取り入れることで商品表現が一段と深まる可能性があります。
まだまだベーカリーが届いていない部分なので、伸びしろとして考えるといいのではと思います。

種や発酵など独自プロセスと柔軟性が ベーカリーの個性

ベーカリーには、「種」、「発酵」という独自のプロセスがあるのが強みです。
パンは気温・湿度など環境に応じて調整が必要な世界で同じ配合でも日によって結果がかわるのがパンの難しさであり面白さだと思います。
その中でその日の最適解を探すのを楽しむ柔軟性がパン職人には求められると思います。

パティスリー的な美意識を ヴィエノワズリーに

華やかで思わず手にとってしまうヴィエノワズリーが強みのお店「ラ ブランジェ リシェ」の遠藤シェフに、ヴィエノワズリーのこだわりを伺いました。

ラ ブランジェ リシェ シェフ マネージャー 遠藤 信行さん
遠藤シェフ(nov1966)のインスタグラム。12万人超のフォロワー

華やかな見た目だけでない本質的な美味しさ

当店はヴィエノワズリーが商品ラインナップ70%を占めていて、来店客のほとんどがヴィエノワズリー目当てです。
インスタグラムで日々ヴィエノワズリーの動画や写真を発信しており、まずは買ってみたいと思って来店される方が多いです。
なので、少々単価が高くてもあまり値段を気にせず購入される方が多いです。
お客様に価値が伝わるような工夫をしているつもりです。
お客様に手にとってもらうきっかけになるように目を惹くようなヴィエノワズリーを作っていますが、小手先の流行りに振り回されていません。
発酵と熟成の基本に忠実に、本質的なヴィエノワズリーの美味しさを追求している自負があります。

ヴィエノワズリーづくりで 最も重要なこと

ヴィエノワズリーをつくる上で最も大切にしているのは、層の美しさです。
そのためにはバターと生地、それぞれの温度と硬さを適正にそろえる必要があります。

ヨーロッパの82~84%脂肪分のバターを使っており、日本の一般的なバターより硬めで扱いづらいと思う人もいますが、層が出やすい利点があります。
生地を低温に設定し、バターは少し柔らかめで調整し、うまくリターダーで伸ばせるようにします。
生地の厚さをそろえ、適格なサイズカットを行い、適正な発酵時間を守るという基本工程を大切にすることが最終的な美しさに直結します。
また折り込み生地を作る際に出る端にあるカットロスも捨てずに活用しています。

他のヴィエノワズリーの新商品の試作に活用することや、カリカリに焼いて砕いてヘーゼルナッツ等と合わせてフィリングにし、無駄にすることはありません。

パティスリーのエッセンスを反映した見た目

さまざまなモールド(型)を使い分け、デザインを変えています。
パティスリーがよく活用するシリコンモールドもうまく活用すれば立体的な成形にすることができます。
半円の型や長細い型、円柱の型など使うと、立体的な造形が生まれ、売場に並んだときも高さがあって存在感が増して、お客様に手に取ってもらいやすくなります。
半円の型も重ね合わせれば球体のヴィエノワズリーをつくることだってできます。
生地だけでなく、フィリングを型に入れて冷凍成形して、生地に埋め込んで焼成すると、フィリングの形が崩れずに焼成できるというテクニックも使っています。

これらのテクニックや技法はパティスリーがよくやっているので、海外のパティスリーの情報などを仕入れながら取り入れています。
また、近所のパティスリーとも交流があり、パンオショコラのショコラを作ってもらっています。
パティスリー側からすると発酵を取り扱うブーランジェリーの技術に注目をしているようで、日々情報交換しています。
ヴィエノワズリーのジャンルはブーランジェリーとパティスリー双方をグレードアップできるものだと思っています。

パンとスイーツの交差点 パン屋と洋菓子屋の客層はどこで交わる?

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