生地は少なく、商品は多く。“ミニマム思想”のリアル

生地は5〜10種が定番。現場が選んだ「増やさない」というやり方

今回、56名のパン屋さんからのアンケートを紐解いたところ“生地数は少なく、商品数は多く”が業界のスタンダードになっていることが見えてきました。
生地数は5〜10種前後に落ち着いているのに、商品数は30~50種類以上つくっているお店がたくさんあります。
一方で、商品数については「今のままで十分」という声が多数。
「もっと増やしたい!」という前のめりな回答は意外なほど少なく、現場の皆さんが“数よりも質と回しやすさ”を大切にしている様子が伝わってきました。

この記事では、この“ミニマム生地×マキシマム展開”がどう成立しているのかを、皆さんの回答と現場のリアルから紐解いていきます。

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少ない生地で広げる、現場の“引き算と足し算”
アンケートでは、5〜10種類の生地で30〜50種類の商品を作る店が多数派。
この数字、パン屋なら「あるある」と頷けるのではないでしょうか。
多くの店が生地を増やさないのは、シンプルに言えば「生地は減らした方が、お店が回しやすい」から。
・仕込み時間が読みやすい
・発酵管理が安定する
・スタッフ教育の負担が減る
・ロスのリスクが下がる
そして最も大きいのは、ひとつの生地から連想する“応用力”こそが店の個性になること。
ハード生地なら、明太フランス・チーズ・季節の具材もの。
ブリオッシュなら、あんバター・クリームパン・リッチな菓子系。
「引き算した生地で、足し算の展開を楽しむ」これが、多くの店で洗練されてきたやり方なのかもしれません。
生地数が増えるほど、オペレーションは大変になる
種類を増やすと魅力的に見えますが、アンケートでは「種類を増やしたい」より「今で十分」が圧倒的。その理由はとても現実的です。
・新しい生地の仕込みは時間も手間もかかる
・発酵のタイミングがずれて、作業がバラける
・スタッフごとに扱い方の差が出て、品質維持が難しくなる
・商品単位のロスが増えやすい
日商8〜15万円帯の店では、生地を増やす=負担が増えるのに売上が増えないという状況になりやすく、無理に増やさない判断がとても合理的なんです。
現場の経験からくる“勘”ではなく、アンケート結果としても裏付けられているのが興味深いところです。
冷凍生地×自家製生地──「どちらが優れているか」ではなく戦略の違い
回答の中には、「30種類の冷凍生地を使っている」という店もありました。
冷凍生地と自家製生地では、生地数の考え方が少し変わります。
● 冷凍生地の店
・商品数を広げやすい
・人手が少なくてもラインナップが保てる
・品質が安定しやすい
・ただし、仕込み調整や味の“伸ばし方”は限定的。
● 自家製生地の店
・生地の調整=店の味づくり
・小さな改良がそのまま商品に生きる
・少ない生地でもバリエーションをつくりやすい
つまり、冷凍生地=幅、自家製生地=深さ。
どちらが優れている、というよりは、店舗の規模・人員・売りたい味によって“べき姿”が変わるイメージです。
今回のアンケートが面白いのは、自家製中心の店でも、冷凍生地中心の店でも、「結局、生地数は増やしすぎない」という結論に近づいているという点です。

ミニマム生地は、忙しいお店の“味方”だった
アンケートから見えてきたのは、生地を増やさないのは“ラクするため”ではなくお店を強くするため。
☑ロスが減る
☑作業が安定する
☑スタッフ全員が扱える
☑展開力はむしろ広がる
という、忙しい店ほど恩恵の大きい考え方でした。
「最近、生地が増えすぎて回っていない」「新商品を作りたいけど、どこから触ればいい?」
そんなときは、まず生地数の見直しから始めるのも一つの手。
“少なくて、強い。”そんなラインナップづくりのヒントになれば嬉しいです。
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