ヴィエノワズリーで洋菓子的なアプローチ!【パンにまつわるエトセトラ#145】

ヴィエノワズリーを意識して見る回
みなさんいかがお過ごしでしょうか。編集部の中村です。
私の書く「パンにまつわるエトセトラ」ではパンに関することならなんでもOK!筆者が気になったことを自由にまとめてお届け!というコンセプトで記事を作成しております。
さて今回はヴィエノワズリーの考え方でパンに洋菓子的なアプローチを大なってみませんか?というような内容になります。
原材料高騰でやむなく価格を上げる際に、それでも買ってもらうために、「商品に付加価値を」という事が良く言われることが多い昨今の、一つのヒントになればと思います!
パン屋に求められる“商品の力”

近年のパン屋には、ただ「毎日の食事を支えるパン」だけでなく、特別感・ギフト性・SNS映えを備えたアイテムが求められています。
その背景には、パン屋が地域に根差すだけでなく、「わざわざ買いに行く価値」を提供する場へと進化している現実があります。食パンやバゲットは生活の定番ですが、差別化は難しい。そこで今回注目してみるのが、パンと洋菓子の中間にあるヴィエノワズリーです。
クロワッサンをはじめとするリッチな発酵菓子パンは、フランスでは朝食やカフェタイムの定番。日本でも「今日はご褒美パン」として選ばれ、気分を上げてくれる存在になっています。いまこそパン屋にヴィエノワズリーのような技術が必要とされる商品が必要になってくるのではないのでしょうか。
ヴィエノワズリーとは?パンと洋菓子の間にある魅力

ヴィエノワズリー(Viennoiserie)は、フランス語で「ウィーン風の菓子パン」を意味し、バターや卵、砂糖を多く含むリッチな生地に発酵の技術を掛け合わせたジャンルです。
クロワッサン、ブリオッシュ、パン・オ・レザンなど、いずれも「パン職人の発酵技術」と「菓子職人の素材・仕上げの感性」が融合しています。
言い換えれば、パン屋にとって洋菓子的な付加価値を打ち出せる絶好のフィールド。カフェ文化が根付いたフランスでは、街角のブーランジュリーで朝のクロワッサンを買うのが日常ですが、日本の消費者には「ちょっと贅沢」な選択肢として受け入れられやすいのではないでしょうか。
日本のパン屋でも展開しやすいヴィエノワズリー商品ピックアップ&深掘り
●パン・オ・ショコラ

クロワッサン生地にチョコレートを包んだシンプルながら奥深い一品。取り扱っているお店も多いのではないでしょうか。
★洋菓子的アプローチ
素材:
クーベルチュールチョコや産地指定カカオを少し使ってあげることで一気に洋菓子の領域。
アレンジ:
抹茶やほうじ茶、ゆずピール入りなど、日本の素材との掛け算で季節限定化。
映えポイント:
折り方、切り口から覗くチョコの艶で見せるしずる感、層の美しさを意識することで話題性を産む。
●ブリオッシュ・ア・テット

こちらも販売しているお店が多いブリオッシュ。卵とバターをふんだんに使ったリッチな菓子パン。
★洋菓子的アプローチ
トッピング:
パールシュガー、ピスタチオ、ナッツで「見て美味しい」表情に。
フィリング:
カスタード、フルーツ、さらにはクレーム・シャンティを詰めるとケーキ寄りに進化。
型選び:
小型にしてプチギフトに、大型にして「シェアする楽しみ」にお客様層に合わせた戦略。
●ショーソン・オ・ポム
(アップルパイ)

リンゴのコンポートを包み込んだ秋冬定番のヴィエノワズリー。
★洋菓子的アプローチ
フィリング勝負:
バニラビーンズ、カルバドス、シナモン、キャラメルなど菓子屋的な演出が肝。
導入のしやすさ:
冷凍パイシートを活用すれば小規模店でもトライ可能。
季節性:
秋の「りんご狩り」文化と結びつけたPOP展開も有効。
● クイニーアマン

バターと砂糖をキャラメリゼさせた、濃厚でカリカリの一品。
★洋菓子的アプローチ
素材力:
発酵バター使用で香りの差別化。
小型展開:
手土産需要に合わせてミニサイズを並べると「ついで買い」を誘発。
焼きの妙:
焼き加減で「パリッ」「ガリッ」「しっとり」と変化するため、職人の個性が光る。
洋菓子の要素を落とし込む

洋菓子屋からすると、ヴィエノワズリーは「焼き菓子のようなパン」。
だからこそ、素材・香り・包装に工夫を凝らすことで、パン屋の商品を“お菓子屋クオリティ”に引き上げられます。
素材アレンジ:ピスタチオクリーム、ベリーコンフィ、キャラメルナッツ。
香り演出:トンカ豆、ラム、シナモン、柑橘ピール。食べる前から香りで心をつかむ。
ギフト戦略:焼き菓子のような箱入り・袋入り包装で「持ち帰りやすさ」「贈りやすさ」を強化。
こうした視点を取り入れれば、「パン屋なのに、ここでお菓子も買える!」という顧客体験が生まれます。
パン屋の新しい魅力づくりにヴィエノワズリーを

ヴィエノワズリーは、パン屋が「パン+洋菓子」の領域に踏み込み、売上の新しい柱をつくるための武器です。
発酵技術を活かしつつ、素材や仕上げで遊ぶ──それだけで「また行きたい」と思わせる商品群になります。
次の季節限定商品、新作フェア、あるいは手土産ギフトラインに、ぜひヴィエノワズリーを取り入れてみてはいかがでしょうか?
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。