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今一度見直したい パン屋の接客術

今一度見直したい パン屋の接客術

今一度見直したい パン屋の接客術

毎朝、生地の状態を見て、粉や水を調整しながら焼き上げるパン。
そのこだわりが、お客様にちゃんと伝わっているだろうか?
実は今、「味は好きだけど…」と、理由を言わずにそっと離れていくお客様が増えています。
その理由の多くはパンではなく、接客にありました。

今回は、312人の主婦へのアンケートから見えてきた、「また来たくなる」「もう来たくなくなる」パン屋の“ 接客のリアル” をお届けします。
あなたのパンを、もっと愛されるパンに。
最後の“ ひと仕上げ” は、お客様との向き合い方にありました。

「味が良ければ、また来てくれる」は本当か?

主婦312 人に聞いて見えてきたのは、「味に文句はない、でも行かなくなる」というリアルな声。
あなたのパンに、もうひとつ“ 仕上げ” があるとしたら、それは、接客かもしれません。

Q1 パン屋で接客に不満を感じたことが、 もう行かなくなる理由になったことはありますか?(n=312)

でも、結局味が良ければ問題ないんじゃないの?
なんて思っていませんか?

Q2 パンの味や価格に満足していても、接客に不満があれば他のパン屋に変えることがありますか?(n=312)

Q3 店員に不満やクレームを伝えたことはありますか?(n=312)

Q4 実際にいかなくなったお店にお客様が持ってる不満はどんなもの?

・スタッフが無愛想だった
・清潔感がなかった
・店員同士のおしゃべり
・並んでいても放置された
・会計ミスがあった
・説明が雑・なかった

振り返るとどこのお店でも起こりうる事ばかり…

◇厳しい意見こそ、改善のヒント。
真摯に向き合うことで、「選ばれ続けるお店」への道が開かれます。

お客様が見ているのはパンの味だけではない!

パンの味には絶対の自信がある。
だからこそ、再来店してもらえるかどうかはパン次第。
そんなふうに考えてはいないだろうか?

しかし、主婦312人に聞いたアンケート結果から見えてきたのは、思わず背筋が伸びるリアルな声だった。
「接客に不満を感じて、そのパン屋に行かなくなったことがある」と答えた人は、実に50%以上。
さらに、「味や価格には満足していても、接客に不満があれば他店に変えることがある」と答えた人も、4割を超えた。

つまり、パンには非がないのに、接客でお店が選ばれなくなるという現実が確かにあるということ。
しかも、問題なのはこの不満がパン屋側に届きづらいことにある。
実際、「不満を店に伝えたことがある」と答えた人は、わずか2割にも満たなかった。
一方で「不満があっても言わない」と答えた人は41.7% と、約3人に1人以上。
つまり、“ 何が気に障ったのか”が見えないまま、お客様は静かに離れていくのだ。
これこそがサイレントクレーマーの正体であり、パン職人にとっては非常に見えづらい落とし穴とも言える。

では、実際にお客様は接客の何が気になるのか?
アンケートで目立ったのは、「スタッフが無愛想だった」「清潔感がなかった」「並んでいても放置された」「スタッフ同士のおしゃべりが気になった」など、パンそのものの品質とは無関係な、ほんの少しの違和感の積み重ねだ。
どれもお客様の買う空気に影響を与える、小さくて、けれど確かに存在するポイントたちだ。
では、私たちはそうした不満にどう向き合えばいいのか?

ここで見逃してはならないのが、「わざわざクレームを言ってくれる人」の存在だ。
確かに、時に理不尽な声や過剰な要求もあるかもしれない。
しかし、その一方で「もっとこうだったらいいのに」と思ってくれるからこそ、あえて声に出してくれる人もいる。
クレームは、受け止め方次第で成長のヒントにもなり得る。
何も言わずに離れていく人よりも、何かを伝えてくれる人は、お店への期待や愛着を持っている人かもしれないのだ。

パン作りと同じで、接客も日々の積み重ねで熟成されていく。
だからこそ、味の仕上げにこだわるように、接客にももうひと手間かけることが、「また来たい」と思われるパン屋につながっていくのではないだろうか。

必要なのは、第一に挨拶、 さらに“ 安心・丁寧・気配り” の3 本柱

最高のパンを焼いても、“ 伝わり方” ひとつで、印象は変わる。
パンの魅力をもっと届けるための「接客のあとひと手間」、一緒に見直してみませんか?

Q5 あなたが『また来たい』と思えるパン屋の接客とはなんですか?

1位 明るい笑顔と気持ちのよい挨拶 (63.5%)
2位 会計がスムーズで丁寧 (41.3%)
3位 焼きたてパンの情報を教えてくれる (35.6%)
4位 身だしなみや衛生面が清潔で安心 (35.3%)
5位 忙しくても気配りや声かけがある (32.4%)
6位 商品を丁寧に袋詰めしてくれる (32.1%)
7位 並んでいてもきちんと対応してくれる (27.9%)
8位 子どもや高齢の人にもやさしい対応 (25.3%)
9位 商品について丁寧に説明してくれる (24.4%)
10位 スタッフ同士の雰囲気が落ち着いている(私語がない) (21.5%)
11位 商品のおすすめを自然にしてくれる(押し付け感がない) (16.0%)
12位 季節やイベントに合わせた声かけがある (9.6%)
13位 レジや会話で名前を覚えていてくれた (5.8%)
14位 特にない (3.8%)
その他 (0.3%)

接客の「4つの大切なこと」+“ 信頼に変える転機”

◇挨拶は、すべての接客の入口

63.5%が「笑顔と挨拶」を最重視。
第一声で店の印象が決まる。
たった一言の挨拶が、「私は大切にされている」と感じさせる。

【信頼に変わる所作】
「おはようございます!寒いですね」などのあいさつ+αで空気がほぐれる雰囲気に。

◇“ 安心” =清潔感と信頼感
パンは口に入れるもの。
だからこそ「見た目の印象」がすべて。
ユニフォーム・髪・爪・トレーの清潔感が、何より信頼の証になる。

【信頼に変わる所作】
きちんと帽子をかぶっている/袋詰めの動きが丁寧=「ここは安心できる」と感じるポイント。

◇“ 丁寧” =所作と声かけの誠実さ
会計・包装・説明。“ちょっとした丁寧さ”に、気づくお客様は多い。
時間に追われても、雑にならない姿勢は、それだけで好感。

【信頼に変わる所作】
「ありがとうございました」と両手で受け渡す/トレーにパンを優しく置く=人柄が出る瞬間。

◇“ 気配り” =「見えているよ」
お客様が感じる“ 満足”の多くは、「見てもらえている」という感覚。
特に、忙しいとき・混んでいるときこそ差がつく。

【信頼に変わる所作】
「お待たせしてすみません、すぐに伺いますね」
たった一言で、不満が“ 安心” に変わるポイント。

Q6 パン屋さんのSNS やレビューを見るとき、接客の印象も気にしますか?(n=312)

日頃から気を付けておきたいポイント3 選

◇「いつ」「誰が」見ているか分からない意識を持つ
店内での何気ない接客も、お客様の記憶や口コミの中では“ 評価される接客” になる。
→ 「今この接客が、次のお客様を左右するかもしれない」という意識を持とう。

◇「接客は全員でつくる空気」と心得る
一人だけが気をつけていても、他スタッフの印象が悪ければ、お店全体の評価に影響する。
→ 現場全体が「お客様から見えている」という感覚を共有することが大切。

◇目の前のお客様=次のお客様の“ 案内役” になる
今日接客しているこの人が、SNSやクチコミで「また行きたい」「もう行かない」と発信するかもしれない。
→一人ひとりのお客様が“ 未来のお客様”を連れてくる存在になる。

●必要以上に怖がらせる必要はありません

お客様の口コミやレビューは、良くも悪くも接客の印象を伝えてしまいます。
だからといって従業員を必要以上に接客に対して、“ びくびく” させるのは良い接客とは言えません。
教育する立場の方にできるのは、「自分らしく、のびのび、でも丁寧に」接客する空気を育てることです。

お客様も従業員も同じ空間にいることが心地よいお店へ

「接客」は、売り場に立つスタッフにとっても、オーナーにとっても、決して“ 気軽” なものではありません。
ましてや、SNSやレビューにまで接客の印象が影響するとなれば、委縮してしまう従業員がいても不思議ではないでしょう。
けれど大切なのは、「評価されるから丁寧に」ではなく、「信頼されるから丁寧に」という意識です。
お客様が接客に求めているのは、完璧なマニュアル対応ではなく、ほんの一言の声かけや、気配りから感じる安心感と人らしさ。
実際にアンケートでは、「挨拶」「丁寧な会計」「衛生的な印象」など、小さな所作がまた来たくなる理由になっていました。

つまり接客は、お店にとってもうひとつの商品。
自慢のパンを支える最後の仕上げが、レジや売り場で交わされる会話や笑顔なのです。
オーナーや教育をする立場の方ができることは、スタッフに「ちゃんと見てもらえている」ことをポジティブに伝え、委縮させずに誇りを持たせること。
「完璧じゃなくていい」「いつものあなたらしさに、少しだけお客様の目線を添えてみて」と、背中を押すような言葉がけが、接客の空気をつくっていきます。
店の中にある空気感は、パンと同じようにお客様に伝わります。
そしてそれが、次の「また来たい」に繋がるのです。

従業員500 名、50年続くパン屋の接客とホスピタリティ

千葉県を中心に複数店舗を展開するピーターパン。
人材不足の状況下でも多くの店舗を抱え、50年間変わらず営業してきた。
従業員500 名規模でも接客の質を落とさない教育と文化を守り続けている。今回はその背景にある判断の軸に迫りました。

株式会社ピーターパン 代表取締役社長 大橋 珠生さんに聞いた!接客が個人技ではなく文化として 根付いた仕組みと教育

株式会社ピーターパン 代表取締役社長 大橋 珠生さん

①接客の位置づけ 「パンを買う場所」ではなく「行くこと自体が楽しみな場所」に

接客は、パンの価値を完成させる“最後の工程”

ピーターパンでは接客を「単にパンを販売する作業」とは捉えていない。
パンを選び、買い、持ち帰るまでの一連の時間すべてを来店体験として設計することが、接客の役割だと考えている。
たとえば、高齢の常連客にとっては、パンの説明以上にスタッフとの何気ない会話が来店理由になることもある。
子ども連れの家族にとっては、パンを選ぶ時間そのものが楽しい思い出になる。

◇Point !
・接客を「単にパンを販売する作業」とは捉えていない
・お店での特別な体験を作り出せているのか
・会話が生まれる余白を、店としてつくれているか

②製造も販売員、販売も製造員 「パンを作る人が、お客様を知らない状態」をつくらない

製造も販売に立つ。接客を“一部の役割”にしないために

ピーターパンでは、 製造と販売をはっきり分けた役割として固定していない。
入社後、まず販売に立ち、「どんなお客様が召し上がるのか」「どんな顔で召し上がるのか」を知ることが大事だと大橋社長は話す。
そのために、パンづくりに集中しがちな製造スタッフも、お客様の姿が見えるよう、お店は製造側から売り場が見えるつくりになっているという。

◇Point !
・製造スタッフも、接客に関わる立場か
・販売を、特定の担当者だけの仕事にしていないか
・自分のパンが、どう選ばれているかを知れる環境があるか

③教育は“ 教える” より“ 体験させる” 教育は、「教える量」ではなく「経験の量」で決まっていく

正解を暗記させない
判断できる経験を増やす

ピーターパンでは、経営方針や接客の考え方を、きちんと言葉にして伝えている。
資料も用意されており、方向性が曖昧なまま現場に任せることはない。
そのうえで大切にしているのが、自分で考える経験をしてもらうことだ。
パンを売る立場だけでなく、自分のお金でパンを買い、お客様の目線で店を見る。
前日に作ったパンをどう美味しく食べるのかなど実際に休憩室で積極的に経験してもらう。
そうした体験を通して、「どう感じるか」「なぜそう思ったか」を考えさせている。

◇Point !
・食べ方・温め方・アレンジなど経験を通して、自分の言葉を持たせる
・品出しは「置く作業」ではなく、接客の入口「トレー+お客様の顔」を見る

④全員がお手本になる仕組み 褒める文化は、良い行動を組織のものにする

「同世代が表彰される」が、「自分もできるかも」に変わる

ピーターパンでは、良い接客や行動を、「その人だけのもの」にしない。
現場で起きた良い行動を、全社で共有し、マネしていくための仕組みができている。
経験年数や役職関係なく表彰され、学生アルバイトやパートスタッフが選ばれることも珍しくない。
同世代のスタッフが表彰される姿を見ることで、「自分にもできるかもしれない」という実感が生まれる。
さらに雇用形態に関係なく、役職をつけることもある。
年代・雇用形態にとらわれず、責任感が育ち行動が続いていく。

◇Point !
・年次や立場で、評価を決めない
・良い行動は全社で共有し、マネしていく
・スタッフの行動が表彰され、全社で共有される事で次の役割や責任感に繋がる

⑤理念を、日々の判断に活かすということ 接客を支えている理念をお客様と共有していく

会社の方針をオープンにすることで、お客様との関係性が育つ

ピーターパンでは、経営理念や大切にしている考え方を、社内だけに留めていない。
社内報を配布し、定休日の理由や研修の内容、どんな思いで店を続けているのかを、お客様にも見える形で伝えている。
それは、店の事情を理解してもらうためというより、ピーターパンが何を大切にしながらパンを焼き、お店を続けているのかを、共有するためだ。
取材の中でも語られていたのは、理念や考え方を丁寧に伝えるようになってから、お店の姿勢を理解してくれるお客様が増え、結果としてクレームが減っていった、という実感だった。

◇Point !
企業理念
夢と笑顔が拡がるホスピタリティ
ベーカリーピーターパン

・店の考え方を、スタッフだけに留めない
・お客様にも、分かる言葉で伝える
・困ったときほど、理念に立ち返る
・判断の理由を、現場だけに背負わせない

ピーターパン 会社経営の目的

時代が変わったことを、どう受け止めるか

今、パン業界に限らず、「若手がすぐ辞めてしまう」「人が定着しない」という声をよく耳にする。
けれど取材を通して感じたのは、それを個人の意欲や根性の問題として片づけていない、ということだった。
かつては、身を粉にして働くことが評価される時代があった。
自分たちがそうやってきたからこそ、同じ働き方を求めてしまう。
その感覚も、決して間違いではない。

ただ、そうした働き方が当たり前ではなくなってきている、という時代の変化がある。
それを良い・悪いで判断するのではなく、「そういう時代が来ている」という事実として受け止めることが、いま求められているのではないだろうか。
必要なのは、人を入れ替え続けることでも、若い世代に無理をさせることでもない。
時代の変化に合わせて、ルールや仕組みを見直し、無理なく続けられる形に整えていくことだ。

ピーターパンは、接客を本気で良くしようとしてきた。
そのために選んだのが、人に無理をさせない形を、先に整えることだった。
接客の質を、個人の頑張りに委ねない。
仕組みや考え方として支える。
その積み重ねが、接客を文化として根づかせ、人が育ち、店が続く理由になっているようだった。

今一度見直したい パン屋の接客術

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