「高級=即ヒット」ではなくなった時代に、どう向き合う?

あの爆発的な人気から数年。高級食パン専門店の閉店が相次ぎ、「ブームは終わった」とも言われる昨今。ただ、そのまま消えたわけではありません。なぜ飽きられ、どこに可能性が残っているのか?
現場のパン屋にとっての「次のヒント」を探ります。
“ちょっといい食パン”はもう珍しくない

バターや生クリームをたっぷり使った“ふわふわ・甘み強め”の高級食パン。数年前は「1本800円でも即完売」「専用袋でブランド感を演出」と、話題をさらいました。
しかし近年、状況は変化。専門店の大量閉店が報道され、「高級食パンはオワコン?」との声も。一方でスーパーやコンビニも“ちょっといい食パン”を展開し、味や食感への期待値そのものが高まってきたことも事実です。
つまり、「高級=特別」だった時代は終わったとも言えます。
“味だけ”では人は動かない時代に

かつては「しっとり甘い」だけで行列ができた時代。でも今は「それなら家の近くでも買える」と思う人も多く、わざわざ足を運ばせるには“もう一押しの理由”が必要です。
たとえば、
ストーリーがある(◯日熟成、◯農家の素材使用)
食卓での使い方提案がある(アレンジトースト提案、ジャム付き)
ギフト利用も意識した設計(パッケージ、価格帯)
つまり、味以外の“伝え方”が求められているのが今の時代です。
“高級食パン的技術”は、他商品に活かせる

ブームは一段落しても、高級食パンで培われた製法やレシピ、ブランディングのノウハウは、ほかのパン種でも活かせます。
実際、最近はとある高級スーパーマーケットチェーンで、「バター香る贅沢ミルクパン」「冷やして食べる生クリームブレッド」など、“ちょっとリッチ”な路線の派生商品が伸びています。
また、高級路線×食事パンという形で「塩バターのハードトースト」なども人気だそう。高級=ソフト食パンだけではない選択肢も広がってきました。
ブームの終わりは、“実力勝負”の始まり・・・?
“ブーム”としての高級食パンは確かに落ち着きましたが、それは消費者が「本当においしいパンはどこか?」を探すフェーズに入ったということではないでしょうか。
派手さはなくても、日常に根づく“質のいいパン”は今後も求められ続けます。
「うちは高級食パンをやってないから関係ない」と思わず、自店に活かせる要素を拾ってみる——今こそそんな視点が活きるタイミングです。