食の多様化が進む今、ヴィーガンやアレルゲンフリー(特定原材料不使用)のパンに対するニーズが着実に高まっています。
動物性原料を使わない製品、アレルギーに配慮した製品は、かつて“特別対応”でしたが、いまや“ふつうの選択肢”になりつつあります。
パン屋が今こそ知っておくべき“フリーフロム”市場の実態と展望とは──。

ヴィーガン&アレルゲンフリーフード市場、日本でも急成長

調査会社IMARCによると、日本国内のヴィーガン食品市場は2024年に約12億米ドル(約1,800億円)に達する見込みで、今後も年平均成長率7.3%で拡大が続くと予測されています(出典:IMARC Group)。
一方、2023年の調査では、日本人の約7%(ベジタリアン4.5%、ヴィーガン2.4%)が動物性食品を制限しているという結果が出ており、加えてフレキシタリアン(必要に応じて植物性食品を選ぶ層)は26.1%にものぼっています(出典:Vegewel)。
この層は今や“特別な人”ではなく、「日常的に選ばれる可能性のあるお客様」になってきています。

乳製品も卵もナッツも不使用──製品開発のポイントと進化

ヴィーガンパン・アレルゲンフリーパンの開発においては、主に以下のような食材が代替として活用されています
🍃バターの代替:植物油(米油、菜種油、オリーブオイル など)
🍃牛乳の代替:豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク
🍃卵の代替:豆腐、アクアファバ(ひよこ豆の煮汁)、寒天、りんごピューレ など
加えて、小麦・ナッツ・大豆などアレルゲン原料を除外した製品も登場しており、レシピの自由度と対応の難易度は確実に上がっています。
ただし、国内ではアレルゲン“27品目表示”が義務ではない点も踏まえ、実店舗での製造表示・販売対応は慎重さが求められます。
大手も対応を開始。パン屋にとって“他人事”ではない時代へ

大手スーパーコンビニ各社でも、ヴィーガンへの関心が高まっている様子。アレルゲン28品目不使用・動物性不使用の商品が全国展開されていたり、トランス脂肪酸・乳成分の使用低減に取り組むなど、“選べる商品群”の中に、アレルゲン対応が組み込まれる動きが進んでいます(出典:マネーポストWEB)。
また、訪日外国人観光客の食事ニーズに応える形で、ホテルベーカリーや空港内ベーカリーでは、ヴィーガン・アレルゲンフリーの食パン・スイーツパンの導入が進んでいる事例も確認されています。
街のパン屋が考えるべきこと

ニーズは「大きくなった市場」ではなく「選べるべき選択肢」へと変化している。
すべての商品をフリーフロム対応にする必要はありません。ただ、“ひとつでも選べるパンがある”という状態が、今後は“当たり前”になる可能性があります。
厨房内のコンタミ対応が難しい場合は、「専用商品」として分けた扱いで提供する工夫も現実的。
通販や冷凍パンのラインナップ拡充として導入することで、フードロス削減と対応ニーズの両立も可能。

ヴィーガンやアレルゲンフリーパンは、「特殊な食習慣」ではなく、「多様化した食の選択肢」の一部として、確実に広がっています。
パン屋として、そのニーズにどう応えるか。
“対応できる店”であることが、新しいファン層との出会いを生むきっかけになるかもしれません。
【参照元URL一覧】
IMARC Group:日本ヴィーガン市場レポート(英語)
https://www.imarcgroup.com/report/ja/japan-vegan-food-market
Vegewel:ヴィーガン・ベジタリアン・フレキシタリアン調査
https://vegewel.com/ja/style/statistics3
マネーポストWEB:イオン・セブンのトランス脂肪酸表示と対応について
https://www.moneypost.jp/1184548