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応援される店になる! 値上げTIPS

「応援される店になる! 値上げTIPS」 お客様に受け入れてもらえるかな? どれだけ値上げしてもいいのかな?

応援される店になる! 値上げTIPS

近年のインフレの影響により、パン屋にとっての値上げは避けられない課題となっています。
小麦・バターなどの原材料費は高騰し、さらに電気・ガスといったエネルギーコストも上昇。
「もう限界…」と感じながらも、「値上げするとお客様が離れてしまうのでは?」と不安を抱えているお店も多いのではないでしょうか?
では、実際にお客様はパンの値上げについてどう感じているのでしょうか?
大切なのは、値上げの伝え方と、お客様が応援したくなるお店作り。
本特集では、「どこまでの値上げなら許容されるのか?」をデータで分析し、実際にお客様が離れないための工夫を探ります。
単なる「価格UP 」ではなく、「応援されるパン屋」になるための値上げTIPSを提案していきます!

アンケート対象
月に1回以上パン屋さんに行くパン好き主婦1,006人のうち330人に追跡調査を実施

パン屋さんに聞いた!
原材料これ以上の値上がりはキツイ?(n=57)

パン屋さんに聞いた!
原材料これ以上の値上がりはキツイ?(n=57)回答結果
・キツイ!…77%
・ギリギリ大丈夫…11%
・まだ大丈夫…12%

お客様の値上げに対する本音とは?

パン屋さんにとって、値上げは避けられない時代となりました。
実際にお客様は値上げに対してどの様な反応を示すのでしょうか。

【Q1】 あなたがよく行くパン屋が値上げをしたら、どうしますか?
(n=330)

反して「行かなくなる」層は4.8%のみ。

「値上げ=即客離れ」は誤解!
4.8%の「行かなくなる」層は値上げする際にあまり気にしなくてよい層かも!

「値上げ=即客離れ」は誤解? お客様の本音とは

パン屋を経営するうえで、値上げは避けられない課題です。
しかし、「値上げ=客離れ」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
実際のお客様が値上げについてどう考えているのか、アンケート結果をもとに分析しました。
まず、「行きつけのパン屋が値上げしたらどうする?」という質問に対し、約70% が「値上げの金額次第」と回答しました。
つまり、値上げの方法次第では、お客様は納得してくれる可能性が高いということです。
また、「行かなくなる」と答えた人は約5% とごく少数派。
値上げ=即客離れとは限らないことがわかります。
一方で、「変わらず通う」と答えた人も約20% 程おり、一定数のお客様は値上げ後も変わらず購入し続けることが予想されます。
これはお店自体に強いファン層が一定数存在することがわかるので、お店のパンの金額以外の部分で、方針を大きく変えなければ、今後も通い続けてくれることがわかります。

【Q2】 パン屋さんが値上げをする際に、 理由を知りたいですか?(n=289)

【Q2】 パン屋さんが値上げをする際に、 理由を知りたいですか?(n=289)回答結果グラフ
・知りたい…58.2%
・どちらでもよい(特に気にしない)…36.1%
・知りたくない(理由があっても値上げは厳しい)…5.8%

値上げに納得できるかがカギ!
適切に値上げすれば、お客様はついてきてくれる!

「ポジティブな理由ならいいよね!」と話す女性

◎お客様にお伝えする際のポイント

●「材料費の高騰」だけではなく、パンの品質向上やお店の努力を伝える
●「値上げによって、お客様にどんなメリットがあるのか?」を明確にする
●事前にSNS や店頭で丁寧に説明し、不意打ちの値上げにならないようにする

値上げの理由を伝えることが値上げ後も通ってもらうカギ!

パン屋の値上げに対する消費者の意識をさらに深掘りしてみましょう。「パン屋が値上げをする際に理由を知りたいか?」という質問では、約60% が「知りたい」と回答しました。
「どちらでもよい」と答えた人は35% 程度で、特に気にしない層も一定数いますが、「知りたくない」と答えた人はわずか5.8% 。
つまり、お客様の多くは「価格が上がること自体」よりも、「その理由を納得できるか?」を重視していると言えます。

消費者はなぜ値上げの理由を知りたがるのでしょうか。
日々の買い物の中で、消費者は価格変動に敏感です。
特にパンのように日常的に購入する商品は、「なぜ値上げしたのか?」を気にする人が多く、その理由が分かれば受け入れやすいという心理があります。
理由が分からないまま値上げが行われると、「ただの値上げ」だと感じられてしまい、不信感を抱かれることもあります。
しかし、明確な理由があれば、お客様との信頼関係を維持しやすくなります。
「値上げの理由を知りたい」と答えた約60% の人は、単に値段だけで購入を判断するわけではなく、お店の方針や商品の価値を理解したうえで購買行動を決めたいと考えている可能性が高いです。
よって、消費者への伝え方も単に「値上げします」だけでは納得してもらえないことが分かります。

実際にどの程度の値上げなら、許容される?

お客様は、実際いくらまでなら値上げに許容できるのか。
食パンを基準にして値上げ金額の上限を聞いてみました。

【Q3 】いつも買っている食パンが値上がりするとしたら、いくらまでなら買いますか?
※普段買っている食パンの価格を基準にお答えください。(n=330)

お客様にとっても価格比較がしやすい食パンで回答いただきました!
【Q3 】いつも買っている食パンが値上がりするとしたら、いくらまでなら買いますか?の回答結果グラフ
+60円以上から急激に許容率は低下

全国的に20~30円の値上げには許容度が高め
+50円以上の値上げにも許容する層は一定いるが、付加価値が必要かも

「どこまでの値上げなら許容される?」食パンを基準に分析!

今回のアンケートでは、値上げ許容範囲の質問を「食パン」に限定して行いました。
その理由は、食パンはほとんどのパン屋が扱っている基本的な商品であり、お客様にとっても価格比較がしやすいからです。
菓子パンや総菜パンは店舗ごとに特徴が異なり、価格の基準が曖昧になりがちですが、食パンであれば「普段の価格と値上げ後の価格」を具体的にイメージしやすく、消費者がどこまでの値上げなら納得できるのかを測る指標となります。

では、具体的にどの程度の値上げなら受け入れられるのでしょうか?
アンケートの結果、「+20円〜+30円」の値上げは比較的受け入れられやすいことが分かりました。
特に、「+20円の値上げ」は約30% 、「+30円の値上げ」は約24 % と、消費者の許容範囲のボリュームゾーンになっています。
これは、近年の物価高騰の影響で、「多少の値上げは仕方ない」と考える層が一定数いるためと考えられます。
一方、「+50円以上」の値上げとなると、お客様の心理的ハードルが一気に上がる傾向が見られました。

例えば、「+50円の値上げ」を受け入れると回答したのは約21% にとどまり、「+60円」以降の許容率は急激に低下しています。
つまり、+50円を超える値上げを行う場合は、「なぜこの価格にしたのか?」という明確な説明や、価格上昇に見合う付加価値の提示が必要不可欠になるでしょう。

例えば、以下のような付加価値の提示があれば、お客様の納得感を高めることができます。

①品質の向上を伝える。
価格が上がることでどのような価値が増えるのかを明確にすることが大切です。
例えば、「より高品質な小麦粉を使用」「発酵時間を見直し、さらにしっとりとした食感に」といった情報を伝えることで、値上げに対する納得感が生まれます。

② ボリュームやサービスの変化。
価格が上がるなら、それ相応のお得感がほしいと考える消費者も多くいます。
そこで、「1斤のサイズを少し大きくする」「ポイントカードの還元率をアップする」など、値上げとともに消費者がメリットを感じられる工夫をすることで、心理的ハードルを下げることができます。 

③ ストーリー性を持たせる。
「ただ値上げする」のではなく、そこにストーリーを加えると、消費者の共感を得やすくなります。
「地元の生産者を応援するために原材料を変更」
「国産バター100%使用で環境にも配慮」といった背景を伝えることで、「この値上げには意味がある」と納得してもらいやすくなります。

地域別の値上げ許容を見てみましょう。

●地域別の値上がり許容度※1の平均金額を出してみました
※1:Q 3 の回答

地域別の値上がり許容度の平均金額の図

地域別のアンケート結果から見えてきた傾向

東北・関東・近畿は+30 円の値上げでも比較的受け入れられる
北海道・中部は+20 円(10% 程度)までが無難
九州地方は、+20 円層が多いが、+50 円の層も意外に多く、二極化
中国地方は+10 円が最多 → 値上げに慎重なエリア

「自分のお店の値上げの参考にしてみよう」と話すシェフ

応援したい店になろう 値上げが受け入れられるための工夫

「単なる値上げ」に終わらせず、お客様に納得してもらい、さらに「応援したくなる店」として継続的に選ばれるための工夫を考えていきます。

【Q4】 パン屋さんの値上げについて、どんな工夫があれば納得しやすいですか?(複数選択可)(n=330)

【Q4】 パン屋さんの値上げについて、どんな工夫があれば納得しやすいですか?(複数選択可)(n=330)回答結果グラフ

【1位】価格据え置きの商品も残す…50.9%
【2位】値上げの理由を説明…35.8%
【3位】新しいサービスや特典がある…33.9%

今まで通りの値段でも購入できるという選択肢が必要

また、商品のグレードアップ等の理由での値上げなら消費者は納得しやすい!

美味しくなるなら値上げにも納得!と話す女性

「応援される店」になるための 値上げの工夫

パン屋にとって値上げは避けられない選択ですが、それをどう伝え、どのような工夫をするかで、お客様の受け止め方は大きく変わります。
アンケート結果からも、お客様が値上げを受け入れやすくするポイントが見えてきました。

まず、お客様が求めるのは「すべてのパンが一律に値上げされるのではなく、変わらず買えるものがあること」です。
看板商品や食パンなど、日常的に購入されるパンの価格を据え置くことで、「この店ならまだ通える」と感じる安心感につながります。
価格維持が難しい場合は、セット販売などで実質的な負担を減らす工夫も有効でしょう。

また、お客様は「値上げの理由」にも敏感です。
ただ「原材料費の高騰」と伝えるだけではなく、「国産小麦を使用し、より風味豊かに」「発酵時間を見直し、しっとり感をアップ」といった具体的な説明があると、値上げを前向きに受け止めてもらいやすくなります。

【Q5】 あなたが「応援したくなるパン屋」の特徴はどんなパン屋ですか?美味しい以外の理由を教えてください。(複数選択可)(n=330)

【Q5】 あなたが「応援したくなるパン屋」の特徴はどんなパン屋ですか?美味しい以外の理由を教えてください。(複数選択可)回答結果グラフ

【1位】こだわりの商品がある
【2位】店長さんの対応が良い
【3位】店の雰囲気が良い

店員の対応やお店の雰囲気などお客様は商品以外でもお店選びをしている

お店の努力でいくらでも評価を変えることができる

「パンの金額だけじゃない、お店に通う意味を作ってあげよう!」 と話す女性

さらに、お客様が「応援したくなるパン屋」の特徴として、「こだわりの商品がある」「店員の対応が気持ちよい」「お店の雰囲気が良い」などが挙げられています。
特に、スタッフの対応やお店の雰囲気は、価格以上に「この店で買いたい」と思わせる大切な要素です。
値上げの際には、価格だけでなく、接客やお店の魅力を改めて強化することが、リピーターをつなぎとめるポイントになります。

また、「値上げ=負担増」と感じさせない工夫も重要です。
ポイントカードの還元率アップや、一定額以上の購入で特典を付けるなど、価格上昇とともに「ちょっと得した」と思える施策を取り入れることで、お客様の満足度を高められます。
加えて、期間限定キャンペーンやイベントの開催も、値上げに対する心理的なハードルを下げる方法のひとつです。
「新価格導入記念」の試食会や、特別セットの販売など、値上げを新しい楽しみにつなげることで、ポジティブな印象を与えられます。
「値上げ=仕方がないもの」と捉えられるのではなく、「それでもこの店を応援したい!」と思われることが、長く愛されるパン屋の条件です。
次は、実際に値上げを成功させたパン屋の事例を紹介します。

値上げが成功したパン屋の実例から学ぶ

実際に値上げを行った店舗から、うまくいった施策を伺いました。
自店で試せる施策があれば、是非参考にしてみてください。

値上げに伴い行った実際にうまくいった施策をご紹介いただきました!

原材料高騰に商品価格が追いつかない

パン工房 ローカリズム (長野県) オーナーシェフ 田本 洋さん
パン工房 ローカリズム (長野県) オーナーシェフ 田本 洋さん

ここ3か月~1年で振り返ってみても、原材料費は約20~40%高騰しています。
できれば、原価率は、30%に抑えたいところですが、通常の価格調整だけでは対応しきれない状況です。
お客様も、最初のうちは、「仕方がない」と言ってくれていたものの、2024年に入って財布のひもが固くなっており、「安いパンのほうが売れやすくなった」と感じます。
値上げによる顧客離れを防ぐため、お客様が納得してくれる理由が必要とイベントを実施しています。


●施策 1:
人気の商品を毎週火曜日に割引

毎週火曜日は人気商品の「ラウンド食パン」を20%割引で、販売しています。
それによってお客様はラウンド食パン目当てに来客数が伸びます。
単体で見ると、原価率が15%を割ってしまうので厳しいですが、その分ほかの商品と合わせて購入してくださるので、売り上げ自体は、上がります。
ただ、お客様が読めないので、商品が足りなくなったり、多く作りすぎてロスが出ることもあるので、改善が必要かもしれませんね。


●施策2:
某コンビニの施策を採用!

モバイルオーダー限定で1か月間、某コンビニで行っていた、具材40~50%増量キャンペーンを行いました。
商品の値上げのタイミングで、人気の商品数点の具材を増量させました。
予約制にすることで、オペレーションの負担も軽減でき、売り上げは、10%も伸びました。
事前告知は徹底的に行い、Instagram や店頭ポスターでも事前に周知。
お客様からは、値上げに対するネガティブな声は一切なく「またイベントをやってほしい」という声まで。キャンペーンを併用することで、お客様に「お得感」を持たせながら自然に値上げを受け入れてもらう事
が出来ました。
値上げ後も来店数は変わらず、イベントをきっかけに新規顧客の定着も見られました。

事前告知やイベントを組み合わせることで、スムーズに価格改定を進めることが可能。イベントの際はオペレーションの事も考え、
負担を減らして行えると◎。

出来る努力と出来ない努力を見極めてお客様の支持率を落とさないための工夫を。

お客様に継続的に通ってもらうための値上げのポイントについて教えていただきました!

原材料高騰にあわせて、都度値上げを

ベーカリーハウス マイ (東久留米市) オーナーシェフ 関根 大介さん
ベーカリーハウス マイ (東久留米市) オーナーシェフ 関根 大介さん

ここ1年で約15~20%の値上げを実施しています。
2022年までは、年にタイミングを見計らって2度ほど値上げをしていたものの、最近ではどんどんと原材料が高騰しているので、必要に応じてその都度値上げをするような形です。
年に3~ 4回は値上げをしていますね。

私も売り手である前に、一消費者という感覚があるので、値上げはそのたびにお客様への説明を行っています。
「自分が消費者だったら…」という視点を大切にしています。
値上げのお知らせの言葉選びは職人目線の押し付けにならないようパートさんにも協力していただいています。


【値上げの方針】商品全体を見て値上げ商品を決める

原材料が上がったら、その原材料を使用しているパンを一律に値上げする方法はとりません。

【Point 1】
売り上げ上位20%の商品・加工パン・季節の商品は値上げの対象になりやすい

すべてを値上げするのではなく、焼き上げた後、加工するようなサンドイッチなどが主に値上げの対象に。

【Point 2】
一律値上げではなく相対的に判断(人気商品は慎重に。ほかの商品で補填も)

商品の個々の金額レンジがあるので、それを超えないように。また、ほかの商品で調整することもあります。

【Point 3】
値上げをしたときに利益をとれるか判断

値上げをすることで、売り上げ貢献度が低いものは、商品のラインナップから削除するような見直しも行います。

【Point 4】
「購買シーンを想定して価格設定」

原材料による単なる価格のつり上げではなく、ブランド価値と消費者目線をバランスよく考慮することが重要。

【値上げの方法】単なる値上げではなく付加価値を

製法から見直して、納得してもらうための金額をつけなおします。

【Point 1】
コストカットでなく、価値向上による価格上乗せ

バターを増量したり、こだわりの国産小麦に変えたり、製法を変えたりと価格以上に商品を改善させ、料金を上乗せします。

【Point 2】
焼成回転数を上げ、原材料の安いものを推し、より売り上げる工夫。

お店では、焼き上げ回数を増やすなどして、原材料の安い商品を売れる工夫を別途行います。

【Point 3】
価格設定は「原価ベース」と「消費者目線」の両方で決める。

原材料による単なる価格のつり上げではなく、ブランド価値と消費者目線をバランスよく考慮することが重要。

【値上げの伝え方】

【Point 1】
値上げの背景を具体的に伝える

【Point 2】
「美味しくなった」と感じてもらえる伝え方を工夫

【Point 3】
消費者の目線を意識し、主婦層のパートさんに文言の確認を

【値上げのタイミング】

【Point 1】
連休明け・新学期など、客層が変わる時期は狙い目

「応援される店になる! 値上げTIPS」 お客様に受け入れてもらえるかな? どれだけ値上げしてもいいのかな?

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