千葉県市川市にある「ブーランジェリー ル シアン」 愛犬と一緒に入れるこのパン屋を営むのが首藤美樹さん。

今回「ベーカリーパートナーに出演してみませんか?」企画に応募いただき、取材が実現しました。
開業から6 年、地域に根ざした店づくりと、こだわりのハード系パン。
次世代の女性たちへのエールを、伺って来ました。

[SHOP DATA]
ブーランジェリー ル シアン
● 所在地:千葉県市川市菅野3丁目3-10 黒松亭Ⅱ B
● 立地:京成電鉄本線「菅野駅」 徒歩8分
● 開業年:2019年
● 定休日 月・火・水
● 営業時間 11 : 00 ~ 18 : 00
アパレルからパンの世界へ。異業種の経験が光る店づくり
首藤さんは20代をアパレル業界で過ごした後、30代を機に食の世界へ転身。
個人ベーカリーでの勤務を経て、2019年に「ブーランジェリールシアン」をオープンした。アパレル時代の経験は、現在の店舗運営にも活きている。
店内のレイアウトやPOP、陳列方法にも工夫が凝らされており、お店に足を運ぶお客様の体験を重視されているのが伝わってきた。
「物件のオーナーの理解があって自由にやらせてもらえたからこそ、自分らしい店づくりができました」と話してくれた。

ワンちゃんと一緒に楽しめる“地域のパン屋”
「ル シアン」の特徴は、犬連れでの入店が可能な点。「この辺って小学生のお子さんよりも犬の数が多い地域なんです。」と首藤さんが教えてくれた。
衛生面に配慮し、対面販売と明確な動線ルールを設けるなど工夫を凝らし、今では飼い主と愛犬の憩いの場となっている。
パンづくりに対するこだわりも随所に光り、素材面では、主力として「キタノカオリ」と「湘南小麦」を使用。小麦本来の甘みや風味を活かす構成に加え、「生産者と繋がれる素材」であることも重視しているという。
また、多様な製法も積極的に取り入れている。中でも意識しているのがハード系パンの食べやすさ。
湯種などを駆使して歯切れの良さや口溶けを調整し、「日常の食事に溶け込む味わい」を意識。商品構成も固定ではなく、週替わり・日替わりで約40種が並び、「飽きさせない工夫」も徹底している。
陳列された商品はオリジナリティのあるここでしか食べられないラインナップだと感じた。

「ブーランジェリー ル シアン」Pick up Bread

【果実のバゲット】
創業から販売しているスペシャリテ。季節毎に中に入れ込む具材を変えて変化を出している。
取材時には、いちじく、くるみ、ホワイトチョコ、栗が使われていた。 具だくさんで食べた際の満足度が高い商品。
特に女性のお客様から人気。

【あん白玉きなこアーモンドクリームのカンパーニュ】
レーズン酵母+サワードゥ(ルヴァン)の生地を使用。
自家製きなこアーモンドクリーム、つぶあん、白玉が層状に入っており、どこを食べても何かしらの具に当たるような設計。
「和菓子」のイメージをパンに落とし込んだ、食感も味も楽しい1 品。
若い世代の女性たちの開業の相談と応援
「起業したいけれど踏ん切りがつかない」「資金の不安が大きい」最近は、首藤さんのもとに、このような悩みを持つ20〜30代の女性たちが相談に訪れるという。
「借金せずに自宅で小さく開業したい」と考える人が多い一方で、「箱(店舗)にはきちんと投資をした方が、結果的にお客さんは来てくれる」と首藤さんは実体験をもとに助言する。
実際に自らも金融公庫や融資を受けて開業した経験があり、資金計画や補助金活用の重要性も伝えている。
また、自身が主催するマルシェでは、開業前の若手パン職人に場を提供。「人前で販売することで自信がつくし、目標が明確になる。そんな場所をこれからも増やしたい」と語る。
次なる挑戦は「ドッグカフェ」
「今後の展望について尋ねると、首藤さんは即答した。
「ドッグフレンドリーなパンカフェを開きたいんです」販売方法も、持ち帰りだけでなく、その場で提案したメニューを楽しんでもらう場をつくりたい」と話していただいた。
「ずっとやりたいと思っていたけれど、言葉にしないと前に進まない」と感じ、今年に入ってからは積極的に口に出すようにしているという。
パンづくりに真摯で、地域に愛され、後進にも光を当てる存在。首藤さんの次なる挑戦にも、期待が集まる。